多孔質媒体の不確実性を克服するWebアプリ ー廃棄物最終処分場の将来予測を現場と共有するー

石森洋行1
1国立環境研究所、〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
Published in 2026

 わが国には約3,400箇所の廃棄物最終処分場があり、なかでも管理型最終処分場では数十年以上にわたる維持管理が求められる。埋立廃棄物は不均質であり、内部で生じる水分・熱・ガス・物質の動態は不確実性が高い。とくに浸出水の最大濃度と発生水量の見積りは、浸出水処理施設の規模・プロセス・人件費を規定するため、維持管理コストを大きく左右する。また日本独自の準好気性埋立構造は、集排水管とガス抜き管を大気開放することで、廃棄物の分解に必要な酸素を無動力で供給する仕組みであるが、豪雨等による管末端の水没・閉塞が一般廃棄物最終処分場の約3割で生じており、その機能不全が維持管理期間の長期化を招いている。  本発表では、COMSOL Multiphysicsにより、不飽和浸透流(Subsurface Flow Module)、多孔質媒体中の伝熱および移流分散、有機物の微生物分解に伴う発熱・ガス発生(Chemical Reaction Engineering Module)を連成した埋立層モデルを構築した事例を報告する。さらに、アプリケーションビルダーで作成したアプリを COMSOL Serverで公開し、降雨条件・廃棄物性状・予測対象物質をドロップダウンで選ぶだけで将来予測を実行でき、結果を動画とグラフで確認できるWebアプリとして現場に提供した。  目的に応じてモデルを単純化し計算時間を短縮したことで、数値解析を専門としない事業者や自治体の担当者でも多条件の試行錯誤が可能となり、維持管理コストに直結する管理方法を自ら模索できるようになった。あわせて、適正管理にどのようなデータが必要かの理解が現場側に広がり、実測値の提供も促された。数値解析だけでは埋められない不均質性・不確実性を現場の長期観測データで補完する半データ同化の枠組みと、その入口としてWebアプリが果たす役割を示す。